ジュエリーに新たな物語を刻む。
デザイナーの原点と美意識
今回望月さんのデザインを手掛けたのは、ジュエリーデザイナーとして約25年、フルオーダーメイド専門のデザイナーとして約20年以上のキャリアを積む下池デザイナー。ジュエリーコーディネーター1級の資格を持ち、高度な専門知識と確かな技術、今の時代にマッチした感性でお客様から絶対的な信頼を得ています。
インタビューでは、そのセンスの秘密とデザインに込める想いについて伺いました。

Profile
ジュエリーデザイナー 下池恵子
エジプト旅行をきっかけにジュエリーに興味を持ち、加工とデザインの勉強を始め、31歳からジュエリー業界へ。年間の合格者が1~3名、現時点でのべ41名しか有資格者がいないという、ジュエリー販売の最高難易度資格であるジュエリーコーディネーター1級の資格を持つ。
日常のささやかな感動が
インスピレーション源

リボンをモチーフにしたエレガントでフェミニンな作品から、アシンメトリーな遊び心のある作品まで、多彩なジュエリーを提案している下池デザイナーですが、その感性はどのように磨いているのでしょうか?
「自然やアート、音楽、旅行、親しい人との会話、食事など、きれい、美しい、新しい、おいしいといった、自身が感じる感覚を大切にしています。
日本は四季があるので、季節の移ろいやその時々の花々などきれいですよね。きれいなものには、何か心に響く感動があります。そのささやかな感動が、デザインのヒントになることが多いです。
インプットのために、ファッション誌もよくチェックしています。ジュエリーに限らず、トレンドやデザイン、形、カラーなどは意識していますね。海外ブランドのジュエリーは、新作が発表されたらショップまで見にいくようにしています。
以前、吹きガラスをしていたこともあり、ガラスや陶器、絵画、彫刻、建築物などのアートも好きです。休日もできるだけ外出して、おもしろそうな美術展や展覧会に足を運んでいます。
常に自分の中に新しい風を取り込んでいると刺激になりますし、デザインを考えている時にふっとアイデアとして出てきてくれる気がします」

ローマの水道橋をはじめとする、ヨーロッパの古代遺跡や建造物が望月さんのリングをデザインするうえでのイメージソースに。

望月さんがオーダーされた実寸のリングの正面図、上面図と指示書。打ち合わせ時には、様々なバリエーションでデザインをご提案いたします。
想いをカタチに。
お客様に寄り添ったデザインを追求

フルオーダーは、きめ細やかなヒアリングから始まります。
「時間をかけてお客様のご要望を伺い、オーダーの流れや予算などを伝えます。大切にしていることは、お客様の立場に立って誠意を持って対応していくこと。まずはお客様の想いを最優先に、お似合いになる、より美しくなるデザインを考え、確認しながら進めていきます。何を作りたいか決まっていなくても、普段どんなジュエリーをつけているのか伺ったり、お召し物や雰囲気から“その人らしさ”を感じ取り、一緒にカタチにしていきます。
望月さんの場合は、画像などでお好みが把握できましたので、“おしゃれ感があり、スタイリッシュ”、“細身”、“オープンリング”をキーワードにデザインしました。シンプルでも普通すぎないよう、ダブルフィンガーのオープンリングに。ブラックパールを立体的にセットし、サイドの透かし部分は西洋のクラシックな建築物を彷彿とさせるデザインに仕上げました。
フルオーダーは完成までに2~3ヶ月ほどかかります。それぞれの想いを受け継いだ特別なジュエリーになるよう、着け心地や高さ、丸み、テクスチャーなど細部にこだわり、オーダーならではの工夫をさせていただきたいと思っております。
想いがこもった大切なジュエリーを、世界に一つだけの新たなジュエリーへと受け継いでいく。ジュエリーにはそれぞれの物語があると思うので、お客様に喜んでいただけた時はとても嬉しいです」

過去のオーダー品のデザイン画。月をモチーフにしたブローチ、色石を用いたブローチにもなる2WAY仕様のペンダントなど。

形見のジュエリーをリフォームする方も多いそう。お父様の琥珀のループタイをバングルに、お姉様のリングを亡くなった愛犬をイメージしたリングに。

下池デザイナーの代表作のひとつである、甘すぎない大人のためのリボンシリーズ。立体や構造を工夫し、新鮮で見栄えのするデザインが特徴。